第2話 制作物ノ背後ニハ戦略アリ 1/2
❚ クリエイティブから戦略を探る(パーソナライズ)
「あっ」
「あれ、持ってきた?」
出社日のある日、エミーがコータに声をかけました。
「うちに届いたやつね、持ってきたよ」
さっそくふたりはお互い、自宅に届いたものをテーブルに広げて見せ合いました。
「どう?細かいところは後でやるとして」
エミーはマーケティング部門でもう10年の経験があります。この部署としては「私が先輩」なので、自然と、この場を先導してしまいそうでした。しかし、切り出したのはコータの方でした。
「マーケティングもクリエイティブも始めたばかりなのでよく分からないのだけど、これ、どういう意図なんだろう?、エミーの所に届いたのは、いかにもパソコンのパンフレット。僕の所に届いたのは、何だろ?ご利用イメージというか・・・」
「そうね、私のはスペック重視で、私の名前が入っていて、コータのには入っておらず、パソコン自体も色相とか、イメージに徹している感じ」
「お客さんによって言い方を変えているところは営業っぽい。でも、ここまでドラスティックに変えるとは。ここまでの発想はなかったなぁ」
コータが一息ついて続けます。
「でも、これって営業と同じじゃね?マーケティングってこういうことなのか?当社のマーケティングはこういうことやっているの??」
エミーはコータの思いがけない問いにギグっときました。
そして、ダイレクトマーケティングではレスポンスクリエイティブと言うものがあり、それはウォンツではなくニーズで訴求することが多いと書かれてあったのをコータは思い出しました。
「そうか・・・こういうことか」
コータはパソコンに詳しくないのでエミー用のパンフには、具体的に、何が書かれているのかまではわかりませんでしたが、おそらくエミーにとって欲しい情報が記載されているんだろうな、というの分かりました。
一人でなにやらブツブツと言っているコータを見ていて、その様子が不思議でした。
「エミー、これがパーソナライズ、てやつ?」
「そう、これがパーソナライズてやつ・・・て、いつ覚えたの!」
エミーが驚くのは無理もなく、ダイレクトマーケティングを説明している本はなかなかなく、エミーはマーケティング部という場にいるので知ってて当然ではあるもの、ついこの間まで営業だったコータが、パーソナライズなんて言葉をいったいどこで覚えたのかは謎でした。